pp―the piano players―

 父も私も、父の命がもう限られていることを知っていた。だから私は、音楽は続けても父の側を離れることはしたくなかった。父を支えられるように、安心させられるように、ピアノを弾くことでの揺るぎない実力と評価を求めた。


 あの演奏が成功すれば、私は国内一の実力と認められるはずだった。
 審査結果を待つ私は、少しの不安と、それより少し多い自信と、押さえられない期待を胸に、控え室の与えられた椅子に座っていた。手には大好きなベートーベンの、傑作と言われたピアノソナタ三十ニ番の楽譜。

「白峰さん、お父様がお見えです」

 控え室のドアが開き、そう声を掛けられる。浮足立って向かった先には、今までに見たこともないほどに険しい顔をした父がいた。