pp―the piano players―

 その報を受けたのは、雪解けの進む季節だった。電話も住所も持たない私宛てには、アカデミーが公式な窓口で、渡された封筒は少しくたびれていた。

 書いてあることが理解出来なかった。どうしたら良いのか分からなかった。私はその便箋と封筒をそのまま楽譜にはさんで、黙々とピアノを弾いていた。

 フランスからの留学生で、大の日本贔の友人がいた。彼女は日本語も堪能で(私たちの会話はドイツ語なのだけれど)、私にあてがわれた部屋に許可を得ずに入り、私に来たその手紙を見つけると、流暢に声に出して読み始めた。

「……すぐに帰国しなさい。お葬式は私たちで行いますが、あなたが娘、唯一の家族なのだから、早くその顔を兄さんに見せなさい」