pp―the piano players―

 わざと足音を立てて近づくと、彼は待ち構えたように私に抱きついた。

「君はきっと喜ぶはずだ」

 彼に手を引かれて、暖かい家の中に入る。ベヒシュタインの置いてあるリビングを抜けて、その奥の書斎(と言えば聞えは良いけれど、ただの空き部屋だった)に彼からのプレゼントはあった。

 いつもは閉めたままのカーテンは開けられ、部屋は光に包まれている。大きなプレゼントは部屋の真ん中で、すっと細い脚を見せていた。本体にはご丁寧に大きな布とリボンでラッピングがしてあるが、何なのかはわかってしまう。だけれど。

「開けてごらん」

 私はまだコートを着たまま、吸い寄せられるようにその「プレゼント」に近付いた。

 胸が、高鳴る。

 金の縁取りの赤く太いリボン。その端をきゅっと掴む。

 呼吸を整えて、一息にリボンを引いた。一頻りリボンの擦れる音がして、それから布がふわっと落ちる。