pp―the piano players―

 彼のブロンドの髪はとても柔らかい。天使のよう、と言うには歳をとりすぎているけれど、彼の髪に触れる度にそう思った。
「恐れ多いな」
 彼はそう言って笑う。
 それから私の髪に触る。インクを溢したように真っ黒な髪を一房掴むと、シルクのようだと言う。

 金と黒、白と黄色。私たちが持つ色は全く違うけれど、それが絡むととても美しい色を為すことを彼も私も知っていた。

「プラトニック・ラブは有り得ると思うかい?」
 その問いに、私はただ微笑んだ。ベッドの上でそんなことを聞く彼が不思議だった。

「ないと思っているんだろう」
 彼はいたずらっぽく笑うと(そんな年齢じゃないのにとても似合う)、私の肌に手を滑らせて遊んだ。くすぐったくて、気持ち良くて、私の体は跳ねる。

「芸術家は恋をする生き物だ。そうだろう、感情を最も揺り動かすのは、誕生と死、そして生けるものへの愛なのだ」
 唇が触れるほど近く、私の耳元で彼は熱っぽく囁く。