pp―the piano players―

病院に着くと、酒井君は車寄せに停車した。ザビーナさんが一番に車を降りて、走るように一人で先生の病室に向かった。ニーナさんはそれを追いかけるように降りたが、圭太郎君は窓の外を見たまま動かなかった。
「駐車場に行くよ」
 酒井君は車を出した。
「うん」
 わたしはどう動いていいのかわからないまま、短い返事をした。

 白い線の区画の中に、手際よく車を入れる。酒井君は無駄のない動きで車から降りる。わたしは慌てて外へ出た。圭太郎君は、体を屈めながら動く。
「ナオ」
 スライドドアを閉めながら、圭太郎君が言った。
「感謝している」
 ぽん、と。滑らかに、よどみなく。
 酒井君は、短く返事をした。わたし達は言葉を途絶えさせて、少し早足で先生のところへ向かった。