pp―the piano players―

「圭太郎は、ナオに謝った?」
 ニーナさんがくるりと振り返る。圭太郎君は大きく頷いた。
「あと、ニーナに謝れと言われた。昨日は、勝手に病院を出てきて、迷惑をかけた。悪かった」
 バックミラーから、圭太郎君の顔が消える。深深と頭を下げている。
 何だかおかしくて、くす、と笑ってしまう。かと思えば、ザビーナさんは本当に声を立てて笑っていた。

 先生のいる病院に向かう間は、ザビーナさんとニーナさんがたくさんおしゃべりをして、わたしや酒井君、圭太郎君もそれに巻き込まれたり、切り返したりして、とても明るい時間だった。わたしがもやもやした気持ちでいるからか、酒井君も何か言いたそうに見えた。冷静な人だと思っていたニーナさんが、たくさん冗談を言うのが意外だった。