それは、幸せになりたいという欲望。
 今まで抱きもしなかった思い。
 物心つく頃――あの大震災のあとから、わたしの生きる道は、マイナスからゼロに向かっているのだと思っていた。わたしが生きている意味なんてないと思っていた頃もあった。先生に出会い、わたしはいていい場所を得た。そしてないものを補おうと生きていた。同じように苦しんでいる子どもたちに手を伸ばすことを仕事に選んだ。先生が倒れて、わたしを育ててくれた先生を失うかと思うと、足が震えた。失くさないように、なくさないようにと祈っていた。
 そうやって生きてきたのに、なくても生きて来られたのに。

 それから。