pp―the piano players―

「それと」
 腹の下にぐっと力を入れ直す。
「どれだけ早紀を泣かせれば気が済むんだ」
 圭太郎は顔をしかめた。
「……俺が、」
 言葉を探し、見つからないのか、体をピアノに向けてしまう。右手が鍵盤をなぞる。

「早紀が待ってる。明日の朝、迎えに来る」
「俺が、あいつのために出来ることは何だ?」
 消え入りそうな声だ。部屋を出かけた僕は、足を止めて振り返り、答える。
「弾くこと。早紀がさっき言っていたとおりだと思うよ。ピアノを弾いて、自分の足元を固めること。独楽みたいだ。回っていれば、立っていられる」

 それから。
「早紀は、聴きたいと言っていたよ」
 その言葉が、このピアニストに力を与えるのならば。

 圭太郎は鍵盤に落としていた目を、僕に向けた。息を漏らし、口元だけで笑われる。
「お前、どれだけお人好しなんだ」