pp―the piano players―

 返事がないので、そっと振り返る。
 さっきと同じ格好で、やっぱり天井を見ている。口を一文字にぎゅっとむすんで、目を見開いて、今にも――
「泣きそう」

 圭太郎は目だけ動かしてわたしを睨んだ。それから右腕で顔を隠してしまった。
 こんな圭太郎君を最後に見たのはいつだったろう。
 そう、ライスターさんが初めて圭太郎君の演奏を聞いた日。圭太郎君は葛藤していた。

 思わずわたしは、圭太郎君の左手を握った。圭太郎君は強く握り返した。
 ふいにあの日を思い出した。手を繋ぎ、わたしたちは知らない町を走っていた。あのとき泣いていたのはわたしだった。でも圭太郎君だって泣きたかったはずなんだ。だって、わたしたちは十一歳だった。まだ子どもだった。

「わたしはここにいるよ」

 手を握ったまま、圭太郎君の頭の方に回る。
 圭太郎君の右腕に触れ、持ち上げようとすると、圭太郎君はそれを拒んだ。