先生の滑らかで長い髪が、肩を流れて鍵盤を撫でた。

 先生はようやく体を起こして立ち上がった。客席を見て、右手をピアノにかけて、左手をお腹に。膝と腰をゆっくりと曲げるお辞儀をすると、わたし達がいるステージの袖に向かって歩く。そして先生が袖に入ると、拍手は止んだ。また静かな暗闇が広がる。

 素敵でした、とわたしは先生にショールを渡しながら言う。先生はそれを受け取ると、にっこりと微笑んでくれた。

「先生、拍手をしてくれたのは誰ですか」

 少し固い声で圭太郎君が尋ねる。先生は自分で確かめなさい、と圭太郎君の肩を叩いた。圭太郎君は不満足そうな顔をした。そしてわたしの方を向く。