pp―the piano players―

「もう、分別もつくでしょう。話そうと思うの、美鈴とあなたたちのこと。私の知る限りを、始めから、きちんと」
「先生が、電話をして」
「私が、カッとなって兄の、いえ、美鈴の家に押しかけて」
「わたしと圭太郎君を……」

 見るなり、あの人は声を荒らげて言ったのだ。「そんな子供、一体どうするのよ」と。蔑むように、冷たい目で。

 わたしと圭太郎君は、先生の家にいていいのか、懸命に、文字どおりに命を懸けて、考えていた。ほかの人の気配がしないこの家で、先生が頼ろうとした(いや、ただ報告しただけかもしれない)唯一の人に、無下にされたという事実は、わたしたちの足元から、また、居場所を奪おうとしていた。
 でも先生は毅然と言ったのだ。この二人を育てます、と。

「何を言っているのよ、美鈴」
 先生の声は、わたしたちのいる地面を守り、固める。そこにまた、槌が振り下ろされる。怖かった。
「あなた、これからピアニストとして、誰に遠慮することなく自由にやっていけるのに、どうしてまた、そんな厄介なことをしようとするの」

 先生は、きっと顔を上げ、あの人を睨んだ。もう、おばさまには相談しない。帰って。