pp―the piano players―


「電気もガスも大丈夫。よし、水も流れるね」
「びっくりした」
 酒井君はわたしを見て言う。
「うん、大きな地震で……」
「違うよ、早紀のこと。もっと動揺するのかと思ったのに、僕よりずっと落ち着いている」
 何度目かの余震。ギッギッギッと部屋が軋んだ。すぐに収まる。
「わたし」
 お湯が沸いた。二人分のお茶を入れる。
「小さい頃に地震で両親を亡くしたの」
 一月の、暗くて寒い朝方に。

 動揺しないわけなんかない。でもわたしは知っている。前に進んでいかなきゃいけないこと。