pp―the piano players―


 着替えて美容室を出たわたしたちの足取りは重かった。着物は美容室に置きっぱなしで良い。レンタルするときにそういう約束になっている。
「どうなっちゃうんだろう、これから」
 薄い闇に包まれた町。愛美の呟きを冷たい空気が取り囲む。

「なんとかなるよ」

 二人の顔がわたしに向けられるのがわかった。でもわたしは足元を見て進む。転びたくない。
「早紀は、ふだんこっちが心配になるくらいなよなよしているのに、ときどきびっくりするほど強気だよね」
「芯があるって言うのかな」
「だって」
 ジャリ、と砂を踏んだ。街の喧騒は、いつもよりよそよそしく耳に入る。力を入れて、歩を進める。
「わたしたち、生きているから」
 自分に言い聞かせる。
 わたしは生きている。こんなに心強い友達に巡り会えたし、先生がいるし、先生を支える加瀬さんがいる。圭太郎君も、あの手紙以来音沙汰ないけれど夢に向かって頑張っている。

 何があっても生きてきたから。
 そして今も、生きているから。