しばらくして照明が回復した。
「卒業生、保護者、並びに来賓、職員に連絡します。只今の揺れは宮城県沖を震源地とする地震です。この建物は耐震性がありますので、落ち着いて下さい。今後の対応についてはホールにて三十分後に連絡します。それまで、講堂内で待機。怪我人等はホール二階の救護室へ……」
 アナウンスがあり、会場はざわめきや安堵の声で騒がしい。
 ――お父さん、お母さん。
 不意に浮かんだ言葉に胸が苦しくなって、視界がぐらぐらと揺れる。
「早紀? 大丈夫?」
 吐き気がする。口元を手で押さえる。愛美が肩を抱いて立たせ、トイレに連れていってくれた。

 水道は止まっていなかった。良かった。口を濯ぎ、拭う。
「どう?」
「吐いたから、うん、楽になったよ。ありがとう」
「ホールに戻らないでちょっと休もう。ね、長椅子のところ」
 二階にあるホワイエの椅子に座る。ガラス張りの一角で外が見えた。さっき写真を撮ったときと変わらない、青空と桜がある。見える建物も、どれも壊れていなかった。