それは、卒業生総代の言葉が終わろうとしていた時だった。ホールが揺れた。
 地震、と感じた直後、大きな横揺れが起こった。長く、強い。地震だ、という誰かの声も、女子学生の悲鳴も、頭を守れ、という叫びも、聞こえた。卒業式の吊り看板が激しく揺れている。照明は振り子のように前後して、埃が降ってきた。点滅し、やがて消えた。非常灯だけが付く。

「停電……揺れは、収まった……? まだ揺れている気がする」
「大きかったね、早紀」
 うん、と返事は出来たのだろうか。わたしはただ呆然として、そこに膝立ちになっていた。
 ――何も崩れて来ない。建物は立っている。何も倒れていない。