大きな目をぎゅっと瞑り、肩を竦ませる。細い手足に力を入れて、早紀は身体中を強ばらせた。
「早紀ちゃん」
 彼女に向けられた俺の腕は、またも行く手を失った。戸惑っていると、早紀の目からは涙が溢れ出して、ますます俺は狼狽える。それから。

「早紀」
 二階の部屋の扉が突然開いて、圭太郎が階段を駆け降りてきた。圭太郎は俺に見向きもせず、早紀の隣に座って手をそっと握る。
「どうした、早紀。安心しろ、俺はここだ」
 早紀の嗚咽がだんだんと落ち着いていく。いたたまれなくてソファーを離れる。階段を降りてきた白峰美鈴が俺を食卓の椅子に促した。

「いったい……俺はただ……」
「おそらく、大人の男性の腕が怖いのよ。前も取り乱したようだけど、あなたが帰ってから、自分でそう言っていたから。圭太郎がそばにいれば大丈夫だから、私たちは二人をそっとしておくのが良いんだって」
「……」
「二人が逃げ出した施設の方も言っていたわ。たくさん、不安はあるけど、二人はここにいることを選んだの」
 不安があるのはこの人も同じだ。二人を受け入れることを決断したのだ。