「誘導尋問だな、まったく」
 認めると、自分が何だか恥ずかしくなってしまう。照れ隠しに笑う。
「早紀ちゃんの眼は、人を正直にさせる」
 意外な発言だったのか、早紀は目を丸くした。
「褒めたつもりなんだけど」
「ありがとうございます……。あ、あのね、加瀬さん」
 早紀は一瞬、二階を見上げた。それから、二階には聞こえるはずもないのに、声を潜めてある提案をした。
「加瀬さん、先生のことを『白峰さん』って呼ぶでしょう? その呼び方を変えて、名前で呼んだらどうかなって思うの」
 きっと、先生も加瀬さんのこと好きになると思うよ。

 いたずらっぽく、いや、これがこの年頃の女の子の反応に相当するのだろう。あどけない笑顔を見せた。
「何て呼ぼうか。先生の方が年上だしなあ」
「美鈴、美鈴ちゃん、美鈴……さん、かな。美鈴さん。うん、先生にぴったり。わたしは先生って呼ぶから、加瀬さんは美鈴さんね。特別な感じで呼んで」

 特別な感じ。
「わかった。美鈴さん、だな」
 うん、と大きく首を縦に振った。お礼をしたくて、早紀の頭を撫でようと腕を伸ばした。その時だった。