pp―the piano players―

 どたどたと階段を下りてくる足音。振りかえると、さっきとは別の子どもがいる。やはりやせていて、目をぎらぎらと光らせた。
「誰だ、お前は」
 そしてぶっきらぼうな口ぶり。
 楽器店と自分の名を告げる。「調律師だよ」

 不審そうな顔を続けるので、道具を見せる。チューニングハンマーを持たせてやり、ついてこい、と促す。ホールのグロトリアンの前に座らせ、鍵盤の蓋を取り外した。
「何すんだよ」
 子どもは焦った声を出す。
「大丈夫、大丈夫」
 アクションがむき出しの状態にすると、そいつは目を真ん丸にしてピアノを見つめた。
「先生のグロトリアンに何すんだよ」

 ハンマーを握る手を取って、一緒に弦を弛める。音が変わったのを確認させて、それから調整し直す。戻ったのを聴かせる。
「ま、ピアノの医者ってところかな」
「じゃあ、先生の味方だな」
 頷く。先生、白峰美鈴か。
 チューニングハンマーを受け取って、再び名乗った。
「調律師の加瀬だ。君がさっき、スタインウェイでモーツァルトを弾いていたんだろう? 名前は?」

 吉岡圭太郎。少年は口にした。
 鋭い眼光に惹かれる。