梅雨晴れだ。
夏の暑さとは違う、心地よい晴れの午後だ。
いつの間にか庭木の手入れがされている。真っ青な花をつけた大きなアジサイは、雑草にさえぎられることなく庭を彩る。一体、何があったんだ。
戸惑いながら、玄関の重いドアを開ける。すると、雨が降ってきた。
「ずいぶん……」
まばらで大粒の雨だ。雨粒の形がはっきりわかる。三階にあるスタインウェイが鳴っているのだ。
目線をそちらに上げると、スタインウェイのいる部屋に続く廊下に立つ子どもと目があった。
子ども。
か細く白い手足に、栗色の髪。目を大きく開けてこちらを見ている。俺はそんなに怖い顔でもしていたのか、瞬きをしない瞳が涙を浮かべるように赤くなる。
「あの、」
声をかけようとすると、その子はスタインウェイの部屋へ駆けていった。雨は突然止んでしまい、中途半端に上げた右手で所在なく頭を掻く。
「失礼ではないかしら。勝手に人の家に上がるのは」
グラスに入れた薄い褐色の飲み物。氷がからん、と音を立てた。
白峰美鈴は、応接間の席を勧め、そこにグラスを置き、自分自身も座る。勧められた席につくと、グラスに腕を伸ばした。見ると、白い花弁が浮いている。
「ジャスミン茶。苦手かしら」
「いい匂いです」



