pp―the piano players―

 まず、プレイエルに取り掛かる。あの手を見た瞬間から、プレイエルを診たいと思っていた。

 プレイエルはフランス生まれのピアノだ。芸術の国で育まれたピアノは、美しい木目と細かな装飾を施された脚を持っている。
 試しに弾いてみる。音程はともかくとして、音色もくすんでいるように感じた。
 ショパンが愛して用いたというメーカーである。繊細な感情を表現できるピアノなのだ。

 鍵盤の沈み込みをどれだけ自由にできるか。返りの速さは。
 雨粒を凍らせて淡く着色し、それを繋いでネックレスを作るような、そういう華やかさと脆さを併せ持つ。そんな音色を。


「ショパンをよく弾くんですか」
 俺は少し、興奮していた。
 お茶を入れていた白峰嬢(という年でもない筈だ)は、手を止めて、首を横に振った。