一か月前のことだ。

 日本に戻って来て早々、目にしたのは店長の不機嫌な顔だった。帳簿を開いて、これでもかと両方の眉を近づけている。
「おい、加瀬」

 こりゃ近づいたら何か悪いことがあるな、と感じて逃げようとした矢先、呼び止められた。

「何だ、その顔は。ちょっとこっち来い」

 カウンターや店内のあちこちにいる同僚と、突然目が合わなくなる。何だよ、冷たいな。渋々、店長の招きに応じた。

「これ、見てみろ」
「何ですか」