バス停から少し歩くと、背の高い樹木に囲まれた大きな家が姿を見せる。門の横に設えてある郵便受けの文字は霞んで、辛うじて住所が読み取れる。それを手元のメモと照らし合わせ、そこが目的地であることを確認した。

 これから取り掛かる仕事への期待に、胸も高鳴れば腕も鳴る。さあ、洋行修行の成果を出す時が来た。早く、名立たる名器に対面したい。それに手を施し、美しく響かせたい。
 心が浮足立つのを歯がゆく感じながら、白峰家の門を開けた。