pp―the piano players―

 離れる。そう、離れる。そこに何も、本当に、問題はない。

 の、だろうか。

『前向きに考えようと思う。もう夢に向かって躊躇うことはない。俺はピアノで飯を食う。それだけのピアニストになってやる。先生と同じ師に付いて、先生を超えるピアニストになってやる。
 早紀、お前の夢は果てしない。それだけに追い甲斐がある。頑張れよ。』

 圭太郎君の紡ぐ短い言葉が、草花の小さな棘のようにわたしの心に触れ、刺激を与える。刺激は涙腺を動かしめ、湧き出た水分がわたしの視界を潤ませる。

『繰り返しになるけど、俺が決断を躊躇っていたのはお前の所為じゃない。お前の所為じゃない。俺の気持ちが原因だ。
 自分の気持ちがやっと理解できた。それを述べる言葉を知った。だから、その言葉でこの手紙を終える。俺はこれ限りでお前に手紙を書くのを止める。』