pp―the piano players―

 知っているよ。

『お前が、俺がピアノを弾くことを認めてくれた。だから俺は、早紀がいる場所でピアノを弾こうと思った。それに、お前を守るには、お前の傍にいなきゃいけないんだ。だから』

 便箋を捲る。

『お前が酒井に出会って、あんなに、楽しそうに弾いている姿を見て、複雑な気持ちだった。大学まで一緒だし、ちょくちょく会っているようだったしな。でも、俺には絶対の自信があったんだ。俺たちは先生の家にいるんだって。』

 きっと圭太郎君は、ホームシックなんだ。だからこんな、聞いたこともない、弱音のようなことを書き連ねている。

『お前は結局、先生の家を出た。俺の絶対は崩れた。 俺は、どうして良いかわからなくなった。俺がやることはただ二つ、ピアノを弾くことと、早紀の傍にいることだった。それは表裏一体だった。

 戻って来い、と言えば良かったのか? 自分の決断で出て行ったお前に、どうして俺が指図出来る?』