pp―the piano players―

 さまざまな習慣、文化の違いにはまだ慣れないと書いている。下宿しているのはライスターさんが所有するマンションで、食事は外食が多い。
 圭太郎君が料理をしている姿を見た事がない。わたしの方こそ「ちゃんと飯は食っているのか?」って言いたくなるよ。

『時々、早紀の夢を見る。』
 そこを読んで、かっと頬に血が上った。

『どんな夢かはあまり覚えていない。でも、お前が出てくる夢だ。』

 酒井君が、そっと頬を撫でる。酒井君の指は決して冷たくないけれど、わたしの頬よりは温度が低い。熱がそちらへ逃げる気がする。

『その夢を見た後、考えるんだ。これで良いんだ、って。

 俺には早紀を連れ出した責任がある。前に、先生の運命を捻曲げたのは俺たちだ、と話したことがあったけど、違う。全部、俺の所為だ。だから俺は、早紀の傍を離れてはいけないと思っていた。俺が、早紀を守るんだって。気負っていたんだ。』