pp―the piano players―




 先生の向かいにはライスターさんがいて、その間に加瀬さんが座っている。ライスターさんの隣は圭太郎君で、わたしと酒井君はエセックスの近くのソファーに掛けていた。

 向こう側のドイツ語の会話は解らない。

 酒井君は先生のケーキをとても美味しそうに食べる。
「母さんが料理好きで、ケーキもよく作っているんだけど」
 最近、酒井君は家族の話をする。
「母さん、まだまだだな」
 酒井君の話に出てくるのは、クラシック好きで少し太り気味な、冗談をよく言うお父さんと、ピアノを習っていたことがあって料理が上手で、優しいお母さん。五つ年下で、高校の吹奏楽部でクラリネットを演奏している妹さん。
 素敵な家族の話。

「俺もこっちに入ろうかな」
 加瀬さんが、自分のカップを持って来た。
「早紀ちゃんに変な虫がつかないよう、見張らないと」