pp―the piano players―

 午後の日が窓から差して、ピアノに反射し、うつ向く圭太郎君の表情を隠している。

「うん」
 相槌ではなく、もっと違う意味を込めて返答したかったのに、うん、としか言えない。何が、うん、だ。

「行くか」

 圭太郎君は腰を上げた。
「お茶が冷めるからな」

 後の言葉は届かない。行くか、の意味を考える。
 ずんと肩に重みがかかったよう、腰が上がらない。視線も上げられない。

「早紀……」

 圭太郎君の声は、低く、わたしのこころを震わせる。その心をわたしは、そっとそっと撫でて落ち着かせる。
 そうだよ、これで良いんだよ。わたしは、圭太郎君に「行ってらっしゃい」を言いに来たんだから。

「行こう」