pp―the piano players―

「良かったらどうぞ」
 カップを受け取る。
 両手にじんわりと広がる温もり。一口飲むと、それが体の中に染み渡った。

「ありがとう」
 酒井君のミルクティーは、ほんのり甘くて、少しバニラの香りがする。
 わたしのキッチンにある物を使っているはずなのに、初めて感じる美味しさだった。
「どういたしまして」

 そっか。
 テーブルの向こうに座る酒井君の顔を見て、このミルクティーの秘密がわかる。

 誰かに作ってもらって、一緒にいるから、こんなにおいしいんだ。

 そう思うと、また涙がこみ上げてきた。
 だから、先生の入れる紅茶はあんなにおいしかったんだ。

「また」
 酒井君が、ふっと息を吐いて笑うのがわかる。
「頭の中でぐるぐると考えて、一人で行き詰まってるね」

 タオルを目に当ててから、酒井君を見る。
「『どうして解るの?』って顔してる」
 図星だ。