pp―the piano players―

「一緒に出掛けて……」
「デート、ね」
 愛美が笑顔で言い換える。
「その時に」
「また告白された?」
 わたしは首を横に振る。
「え、早紀から言ったの?」
 それも違う。

 あの日。
 部屋に戻った途端に、わたしの中の堰が切れた。あんなに泣いたのは何年振りだったんだろう。

 酒井君は泣きじゃくるわたしの傍に、何も言わず、ずっといてくれた。だから。

「今までだってずっと、酒井君の優しさに甘えていたんだけどね。もっと甘えることにしたの」
 この抽象的な言い回しでは不満らしく、二人とも納得いかないような顔をしている。

 でも、わたしはこれ以上具体的な説明をしたくなかった。我が侭なわたし、自己中心的なわたし。

 片方の分銅を置き換えたら、天秤が釣り合った。前に進むために、前に進むために。