pp―the piano players―

 圭太郎君の腕に、より一層の力が入る。

「すごいじゃない。あなたの力は成績が示しているし、白峰美鈴のお墨付きでしょう?」

 圭太郎君、どうしたの? 怖いの?
 わたしは呼吸をゆっくりにする。このテンポが、圭太郎君に伝わりますように。

「ライスターが声をかけてくれるなんて、滅多なことじゃないわ。返事は? 当然、受けたんでしょう?」

 わたしは一歩足を引いた。圭太郎君の足も動いて、体重をかけていた分、つんのめる形になる。それをうまく受け流して、さっきまでわたしが座っていた椅子に圭太郎君を座らせる。圭太郎君が腕を解かないので、わたしは上半身を抱かれたまま、圭太郎君の前に膝立ちになった。

「ねえ、どうなのよ、圭太郎」
「戸賀さん」

 圭太郎君のシャツからは、先生の家の匂いがする。一人暮らしを始めて、先生が使っているのと同じ洗剤で洗濯をしても、どこか匂いが違っていた。しばらく、その違和感に慣れなかった。

「少し、黙ったらどうですか」