pp―the piano players―

「早紀」

 呼ばれるのと同時に腕を掴まれて、立たされてそのまま、縛られる。
「圭太郎君?」
 圭太郎君の二本の腕は、わたしが動くのを許さない。圭太郎君が隔てているけれど、酒井君と令依子さんが見ている。わたしは恥ずかしくて顔から火が出そう。

「ねえ、圭太郎君」
 離して、と頼んでも、圭太郎君は答えない。

「圭太郎、ちょっと」
「おい、吉岡」
 二人が何を言っても、圭太郎君は答えない。

 恥ずかしさが少し治まって、体が震えているのを知った。ううん、わたしが震えているんじゃない。圭太郎君の震えが、わたしに伝わっているんだ。

「圭太ろ……」
「面倒は全部見てやるから」
 低音が、心臓に届く。
「来い、と言われた」
 心臓は、応えるようにその鼓動を速くする。
 圭太郎君の言葉の意味がわからない。わたしは、泣き出しそうな声をした圭太郎君を、どうしたら安心させられるか、そればかりを考えている。

「留学を薦められたのね」
 令依子さんが、興奮を抑えながら言う。
「ライスターに」