pp―the piano players―

「裏は大騒ぎだったのよ?」
 と言って、令依子さんはソファーに座った。わたしと酒井君が向かい合っていて、その間に令依子さんが入る。

「圭太郎は勝手に出番変えて、それで鷲尾が怒っちゃって」
 わたしは鷲尾先生の顔を思い浮かべる。
「良い人なんだけど、頭が堅いのよ。あの人も、自分がトリだって楽しみにしてたから……仕方なく出たけど、圭太郎の演奏中はずっと機嫌悪くてね」
 令依子さんが苦笑する。
「あの人?」
「無粋だよ、早紀」
 酒井君が言うと、今度は声を立てて令依子さんが笑った。

「最後に演奏する予定だった」
 四年の、と令依子さんはその人の名前を口にした。
「私ね、ピアノが上手い人が好きなの。あの人は、私たちの学年で一番の成績だから」
 今度は、うふふと一人微笑んでいる。綺麗な人が、こうもたくさんの笑みを見せてくれるとこんなに魅力的なんだ、とわたしは頭の隅で思っていた。

「あ、ごめん。何の話だっけ」
 令依子さんがわたしたちに視線を戻す。酒井君は、膝を少し前に動かした。