pp―the piano players―

「コンラート・ベンツェル・ライスター、スペルはこう」
 パンフレットの別のページに、ペンを走らせる。Conrad Wenzel Leister と綺麗なアルファベットが並んでいる。

「確か今年で六十五歳になるのかな、ドイツ人のピアニストだよ。ピアニストとしてだけじゃなくて、むしろ教育者として活躍していて、ウィーンやベルリンの大学で教鞭を執ったこともあるんだって」

 ドイツ、ベルリン。
 先生はドイツにいた頃のことをほとんど話さないので、先生がドイツのどこで誰と何をしてどう過ごしていたのかをわたしは知らない。いつか加瀬さんが、先生の活躍を自分のことのように自慢していたくらいだ。

「あら、まだいたの?」
 その声に、顔を上げる。
「令依子さん」

 ステージ衣装から、ラインの綺麗なワンピースに着替えている。すっと伸びた脚に高いヒールのパンプス。とても似合っている。わたしが先ほどのお礼を言うと、令依子さんは良いのよ、と手を振った。

「圭太郎君を待ってるんです。何か話がありそうだったんですけど」
「鷲尾に追い出されたのね」
 わたしと酒井君は、同じタイミングで頷いた。