pp―the piano players―

 歩きながら、圭太郎君は指差した。
「お前、どこに座ってんだよ」
 と、酒井君に文句を付ける。

「俺は一つ後ろの席を渡しただろうが」
「早紀が心配だったんだよ」
 酒井君の言葉を受けて、圭太郎君がわたしを見てくる。
「もう、何ともないよ」
「そうかよ」
 声は素っ気ない。

 圭太郎君は、控室を気にする素振りを見せた。
「どうしたの?」
 大好物を前にお預けをくらっている子犬のよう。そわそわした態度で、圭太郎君はわたしに言った。

「先生が来ているんだ」

 違う、先生が来ているだけじゃない。
 わたしは、圭太郎君の言葉の先を待った。

「――も一緒にいる」
 聴き馴れない名前。わたしより先に、酒井君が反応した。

「ライスターって、コンラート・ライスターが来ているのか?」
 圭太郎君は首を縦に振った。