pp―the piano players―

「俺も見たかった」

 わたしが何も答えないうちに、圭太郎君はそう言って口角を上げた。

「加瀬は? まあ、得意になってべらべら喋ってたんだろうな」
 と、眉を下げる。
「あいつは調子に乗るからな」

 圭太郎君が話す。わたしが困る。加瀬さんが茶化す。先生が微笑む。
 温かいお茶と、先生のお菓子と、ピアノを囲みながら。

 圭太郎君の声が、瞳が、あの日常を思い出させる。
 ねえ、圭太郎君。

「あー、先生のソナタ、聴きたかったなあ」

 圭太郎君は、何にも変わってなかったね。
 心細くなることなんてなかったんだ。


「ちょっと、あなた達、二人の世界に入らないでくれる? あなたも、ぼーっとしてないで何か言ったら? 彼女、圭太郎に取られるわよ」
「僕は」

 酒井君は数歩下がった。

「早紀が望んでいるなら」

 そして、壁の向こうへ行ってしまう。令依子さんも促されるように消え、わたしたちは二人、残された。