pp―the piano players―

「まだ四人目だよ」
 酒井君が言う。それを聞いてほっとした。

「あなたもすぐ気がついたし、あの曲、無駄に長いのよね」
 と、ホールを指差して笑う。
 戸賀令依子さん。目鼻立ちのくっきりした顔立ちだと、ステージ用のメイクをしていてもわかる。

「誰か、お目当てがいるの?」
 令依子さんに問われ、答えあぐねていると、客席で拍手が沸き上がる。ホールから漏れ聞こえるその音を耳にして、わたしは弾かれるように腰を上げた。

 が、膝に力が入らない。すぐにまた座ってしまった。
 令依子さんが、すい、と首を傾げる。
「圭太郎のファン?」

 わたしはうつ向いて、首を横に振る。
「違います」
 どうして、こんなに苦しいんだろう。

「幼なじみです」

 拍手が鳴り止む。
 行かなきゃ。圭太郎君の演奏を聴かなきゃ。

「早紀、」
 酒井君が何か言いかけるが、それはスピーカーから流れたアナウンスに消された。

『ここで、プログラムの変更をお知らせします』

 わたしたちはそれぞれ、天井の隅にあるスピーカーを見上げた。