pp―the piano players―

「気分はどう?」
 ようやく、自分が横になっていることに気付いた。慌てて身を起こすと、頭が揺れる。

「ああ、無理しない無理しない」
 ふらつく体を支えられる。
 ホワイエに据えてある長椅子の、皮の柔らかさが心地よい。

「わたし……」
「苦しそうにしてたから、客席から連れ出したんだ」
 わたしの肩を支える酒井君の笑顔から、顔を背ける。わたしは酒井君を困らせてばかりだ。

「お水飲む? 私、口つけてあるけど」
 差し出されたペットボトルの先を辿る。あ、と声を溢してしまった。

「華麗なる大ポロネーズの」
 先ほど、見事な演奏を披露していた女性だ。
「とっても素敵でした」
「ありがとう。それより、これ受け取ってくれるの?」

 常温の軟水が、一口飲んだだけで体の隅々まで行き渡るようだ。落ち着いてきてやっと、他のことを考えられる余裕が生まれる。
 演奏会は、今、どうなっているのか。