それから、自分の腕に目をやる。バッグとパンフレット。鮮やかな贈り物はない。
圭太郎君の演奏会はいつも、先生や加瀬さんと一緒に来ていたからそんなことを気にしていなかった。
「花束、用意すれば良かったね」
ぽつりと溢すと、酒井君は気にしないで、と優しく声をかけてくれる。
「僕たちは、吉岡の演奏を聴きに来たんだ。花束を渡しに来たんじゃない」
そうだよね。
そう、自分に言い聞かせるけれど、頭の片隅にあるものが拭えない。むしろ、どんどん大きくなっていく。
演奏会に演奏を聴きに来るなんて当たり前すぎる。たくさんの拍手と花束を貰って圭太郎君は喜ぶだろう。花束も持って来ないわたしに失望する? こんなに素敵な席を用意してくれたのに、圭太郎君はあんなにわたしのことを気に掛けてくれたのに。わたしは、圭太郎君に何一つ返せていない。
圭太郎君から離れてもなお、わたしは圭太郎君に迷惑をかけっぱなし。
圭太郎君。
嫌われたって仕方ないと思っていたけれど、嫌われるのは、辛いよ。
「早紀?」
酒井君の声はやわらかくわたしの耳に届く。
「うん」
「始まるよ。前、向いて座って」
そう言って、酒井君はわたしの肩を叩いた。
みんな前を向いている。だから、涙は誰にも見られないから。
圭太郎君の演奏会はいつも、先生や加瀬さんと一緒に来ていたからそんなことを気にしていなかった。
「花束、用意すれば良かったね」
ぽつりと溢すと、酒井君は気にしないで、と優しく声をかけてくれる。
「僕たちは、吉岡の演奏を聴きに来たんだ。花束を渡しに来たんじゃない」
そうだよね。
そう、自分に言い聞かせるけれど、頭の片隅にあるものが拭えない。むしろ、どんどん大きくなっていく。
演奏会に演奏を聴きに来るなんて当たり前すぎる。たくさんの拍手と花束を貰って圭太郎君は喜ぶだろう。花束も持って来ないわたしに失望する? こんなに素敵な席を用意してくれたのに、圭太郎君はあんなにわたしのことを気に掛けてくれたのに。わたしは、圭太郎君に何一つ返せていない。
圭太郎君から離れてもなお、わたしは圭太郎君に迷惑をかけっぱなし。
圭太郎君。
嫌われたって仕方ないと思っていたけれど、嫌われるのは、辛いよ。
「早紀?」
酒井君の声はやわらかくわたしの耳に届く。
「うん」
「始まるよ。前、向いて座って」
そう言って、酒井君はわたしの肩を叩いた。
みんな前を向いている。だから、涙は誰にも見られないから。



