自分も同じように育て、作った時に初めて感謝の気持ちをもった。そしてこれまでの生活が当り前のことのように思っていた自分が恥ずかしかった。

 宿に着き、快く調理場を貸してもらえたことにも感謝しつつ、料理をすることにした。
 この世界にきて初めての。
 食材の中には初めて見るものもあるから、どんなものになるかは分からないけど。

「うわぁ、いいにおいですね。ところでこれは何ですか?」
「うん、上手く出来たみたいでよかった。これはカレーっていうもの、もどきかもしれないけれど」

 実際はカレールーぽいものがあったからそれを入れてみましたってだけなんだけど。
 味見をしたら、まあそれっぽい味になっているから問題はないかと思う。

 部屋に持って行って、食べることにした。


「わっ、おいしいです。料理もできるお妃さまってすごいですね!!」
「ははは、料理はできないととは思っていたけど、妃になるなんて思ってもなかったよ。今でも不思議な気持ち」

 食べながら、苦笑いを浮かべる。

「本当はね、その事実も受け入れるつもりもなかったし、帰りたいとばかり思っていた。帰るために秘玉を完成させるつもりでもいた」
「そうだったんですか? 今は……」
「今はね、そばにいたいんだ。リュイスのそばに。わたしをこんなに必要としてくれている人に出会えてよかったって思っているし、改めてそんなこと思うとドキドキする」

 だからこそ、今度はこの世界のために秘玉を完成させたい。そのために世界を知りたい。そう思うようになった。

「って今言ったことは誰にも内緒ね、恥ずかしいから。言ったら承知しないよ」
「ははは、分かりました」

 この日食べたカレーは、今までになくおいしかった。
 気持ちも楽になれた。