「生きることに必死なんだ。作物も育たず、税もある。このような状況で生きることなんて不可能じゃないか」
「……村ってそんなに大きくないんじゃないの。隣の村や町も大変なんじゃないの?」
旱魃ということは、広域に及んでいる可能性がある。このムゥの村だけじゃないかもしれない。
「もちろん、大変だろうさ。ただ、向こうは織物の特産物があるから、金があるんだ。そのほんの少しの金さえ貸してくれない」
「それはひどい、明らかに差がつくわね」
男が頭を抱えこむ。ひどく悩んでいる姿に、わたしはなすすべがなかった。
どうにかしたいのに、どうすることもできない。もどかしい。
「わたしでどうにかなるのか分からない。でもわたしの思いは助けてあげたい。せめて、餓えを凌ぐだけの食べ物だけでもあればとは思うけど、わたしなんかじゃどうにもならないわよ」
「それでもいい。ただそういう村があるという事実を知っていてほしいんだ。無駄死になんてしたくないから」
そこまでの強い思いに何も感じないわけがなかった。でも、本当にどうすればいいの?
この地では、一人ぼっちなのに。
「今のわたしじゃ何もできないということだけは言っておく。でも、その気持ちだけは受け取ったから」
いつか本当に、わたしもこの国に携わることがあるのなら、この時の気持ちを忘れないようにしよう、そう思わざるを得なかった。
「話は聞いた。それで改善できるか分からないけど、一応話しておくから」
決して長い時間ではなかった。でも、わたしの中では、とても長い話合いのように思えた。


