【長】純白花嫁


 次に目を覚ましたのは、夜中だった。
 ふと目が覚めると辺りは真っ暗闇。物音一つしない。
 灯りもないのは久々だった。王宮では常に小さな火があり、暗闇というよりかは、薄暗いかんじ。
 でも今はそんな光さえない。

「夜の闇ってこんな色だったんだ」

 なんてのんきなことを考えつつ、起き上がる。
 でも肝心な灯りがどこにあるのか、それどころか付け方すら分からない。


 離れて気づく、文明のありがたみに。
 心まで弱くなってしまいそうだった。

「早くも挫折しそう」

 取り敢えず、お腹は減っていないから、お風呂に入って、歯を磨いて寝よう。
 宿主から聞いた話によると、この部屋の宿泊者にもれなく付いてくる特権があるそうだ。
 それは大浴場貸切権。
 この国では湯浴み程度なシャワーが主流だけど、疲れを癒やすための温泉みたいなものもあるそうで。
 この宿にはその温泉をひいていて、人気なようだ。だけど貸切にできる大浴場はなかなか使用出来ない。
 今回はその貸切温泉に入れる。目は冴える一方だ。