旅に出ることを言うと、驚きはするが誰も反対はしなかった。準備をして、すぐに出発しようと思ったが、なぜか目の前にはフロウが立っていた。

「ずいぶんと思いきったことをするのね」
「あなたには言ってなかったけどね。こう独り立ちしてみたいのよ。いつも誰かに助けられてばかりで、結局、与えられた試練しかやってない」

 そう言って、窓の外を眺める。今日も天気は良い。
 こんないいときに旅立てるなんて、幸せよね。

「だから自分で試練を見つけてくるの。この国がどんな国なのか見つめなおすために」
「……そう。貴女気付いている? その秘玉。大きくなっているわ」

 言われて気付く。いつも身に着けてはいるが、特に変わっているようには見えない。
 分裂しているわけじゃない。なのに、大きくなっていると?

「前からこのくらいじゃなかった?」
「ずっと見ているから、気付いていなかったのかもしれない。この眼から見たら、久しぶりだったせいか、大きくなっている」
「ふーん、そうなんだ」

 手にとって、ころころと動かす。確かに毎日見てたら、変化なんて気付かないけど、そう言われると、嬉しくないわけがない。
 思い返せば、最初は本当に小さかったかもしれないし、乳白色も濃くなっているような気がする。

「貴女の心は純白、何にも染まらない。染まらない自分の強さがある。それを持ち続けてほしいわ。それがわたくしから貴女への旅立ちの言葉」
「ありがとう」

 そうはっきり言われると恥ずかしい。ありがとうしか言えないけれど、心の中は幸せでいっぱいになった。