「国とは動かす者がいなければ機能しない。そのために選ばれたのなら、それを全うするだけなんだ」
「なるほど」
何か、彼が雲の上の人のように感じた。
わたしとは違う。
「だから合歓がこの国に興味をもってくれたのが嬉しいんだ。だから合歓の力になりたいし、知りたいことがあるなら全て教えよう」
リュイスはこの国を愛している。
何故だろう、新たな彼の一面にわたしは悲しくなった。
心の中に穴が空いたようだ。
でもそれを知られたくない。気が付けばわたしは必死になって「わたし」を隠していた。
気が付いた時はすでに言葉を放っていた。
「この国についてまだまだ知らないことだらけでしょう? だから少し旅をしようと思うの。中心だけでなく、周りもよく見て。百聞は一見にしかずっていう言葉もあるし」
意味を知っているかは分からない。だけど、雰囲気で伝わるだろう。
「リュイスに少し教えてもらったら、ちょっとわたしも勉強しに行ってみようと思って」
多分それはわたしだけが取り残されていると感じたから。とっさに出た言葉だった。
彼に並びだい、この時のわたしはこんな風に思っていた。


