【長】純白花嫁


「先に訪れた私を無視するなんていい度胸ですよね」

 リュイスの後ろ、わたしの方からは、不気味に笑うジルの姿が見える。絶対零度の微笑み、例えるならそんな感じだ。

「ははは、国務筆頭が何の用なんだ」

 対するリュイスは大きく身震いし、必死に声を紡ぐ。

「本日は彼女の教育係でして、政治の見学に来たんですよ」
「わぁ、合歓がそんなに積極的だったなんて」


 いや、そんな風には思っていないでしょ。この棒読み具合からすると。

「目的は分かった。後は私の方で引き受けるから、下がってもいいぞ」

 そう言うや否や、ジルの後ろに周り、背中を押し、部屋の外へと追い出した。
 さすがにそれにはジルも焦っていた。しかし、リュイスの力の方が強かったのか、追い出されてしまった。そしてちゃっかり、鍵も閉める。抜け目のないやつだ。

 外からは諦めたのか、ジルの怒鳴る声も聞こえない。
 当たりは一時、静寂と化した。

 でもそれは一瞬のこと。邪魔者がいなくなって嬉しいのか、リュイスはこわばった顔から笑顔になる。