今の時間は会議もなく、リュイスは個人の執務室にいるという情報を得た。
さすがエリート。気になることをいう前に答えてくれる。
入り組んだ赤や金色の廊下を歩き、一際豪華な扉が現れる。
「失礼します」
わたしがいざ心の準備をして、深呼吸してから入ろうとした時。
隣にいるジルはわざと空気を読んでいないのか、ノックもせずに大胆に中に入った。
「ちょっとー!!」
焦りも忘れてつっこむ。なのにジルにはわたしはさも見えていないかのように扱う。
「合歓!」
一方、部屋にいたリュイスは逆にジルなんかは見えていないのか、明らかに無視してわたしに抱き付いてきた。
「突然来るなんて。さては驚かすつもりだったんだな」
リュイスの胸に顔が当たる。背中にまわされた腕のせいで、出られない。
恥ずかしいけど、それよりも苦しい。きつくきつく捕らわれて息が出来ない。
「く、……しい」
空いているわたしの手では、彼の包容を解くだけの力はない。
ここは空気となっている男、ジルに助けを求めた。とは言っても、満足に喋れないから目線で訴えるように。
離れた。
わたしの願いは届いたのか、リュイスの後ろに周り、彼を引っ張った。


