見学させてもらえるなら、この機会を逃さないといろいろなところを見て回ることにした。
ジルさんに案内してもらっているけど、それは迷子なならないためであって、案内らしい案内はしてくれなかった。
確かに調理場とかの説明などは期待していない。
名前は知らないけど、見覚えのあるメイドさんたちもおり、笑顔で会釈しておいた。
若干変な顔で見られたけど気にしない。
「今忙しそうですね」
「ランチも終わりいよいよディナーの仕込みが始まりましたから」
「え、今から夕飯の準備!?」
先ほど、昼食を終えたばかりなのに、休憩もないの?
「ディナーは一番手のこんだものが求められますからね。ですから調理場では交代制になっており、ほぼ一日中コックによりチェックされてます」
「一日中……」
なぜ夜中もと言いたくなったが、止めておいた。
ここに住まうだけで豪華な食事が毎日食べられるとは贅沢にもほどがあると思った。
わたしの住む離れでさえも手の込んだものを頂いているのに。
今更ながら貧富の差を感じた。
あとで聞いた話によると、この城で働く人たちも食堂で食べるため、かなりの量を作らないといけないとか。


