とにかく、この国では実力がものをいう。
 もちろん、それがすべてではないらしいが、それはこの国が成り立った時から決まっていることらしい。
 その所以は、シロラーナ以前の国にあるみたいだけど、それは歴史になるからと詳しくは教えてもらえなかった。

「実際、聞いていてもわからないと思いますので、一回見学してみますか」
「え、いいんですか。でもそんなに簡単にできるものなんでか」

 でもこの国のことだから、できそうかも。
 今まで見てきた平和な街並みに城の情景、どれも幸せに満ちている。
 それは国の豊かさを表しているということになると思う。

「この国の人となられる貴女なら歓迎してくれるでしょう」

 わたしって歓迎されているんだ……。
 でも、わたし自身はこの国の人のことを何も分かっていない。
 なら、わたしにはわからないといけないことがたくさんある。

「是非お願いします」

 その答えがでるのに、そんなに時間はかからなかった。
 今までのわたしは、誰かに必要されていることなんてなかった。
 むしろ、必要としてもらうために、一生懸命だった。
 勉強だって、そのために頑張ってきた。

 でもいまは逆。必要とされているから、頑張りたい。
 たったこれだけの違いなのに、わたしの心は救われている。


 こうして、わたしは一歩を踏み出そうとしていた。
 その先に、何があるなんてまだまだ分からず。