わたしが想像するのはシロラーナとはまた違う国、世界。貧富の差はあれど、それぞれの幸せが満ちた国。
「皇妃はその中の貴族の姫だった。貴族の中でも大王族に近い貴族だったそうだ」
どこか遠い国に思いを馳せて語る口調に目を閉じて想像を広げる。
「十八の時に運命は変わった。それまで大王族の王子に嫁ぐことが決まっており、その準備を忙しなくやっていた時、見たこともない服を身に纏った少女と出会った」
「それはもしかしてフロウ?」
話を聞くうちに驚きを隠せないでいた。
だって「十八歳」、「それまで自分の未来に向かって準備をしている」……わたしと全く一緒なんだもの。
わたしもそうだった。この国とは縁もゆかりもないところで、大学生になる準備をしていた。
ただ違うことと言えば、その少女を受け入れたか否か。
「皇妃は勿論、周囲の人物は大反対だった。王子の妻になる予定が突然現れた使者の国の皇太子と結婚だなんて」
わたしとは取り巻く環境も少し違う。
「だが管理者は常に自分の役目に忠実。反対する人々や嫌がる皇妃を無理やりシロラーナに連れ帰って皇妃としたんだ」
まるで月に連れて行かれたかぐや姫のようだ。
そしてあまりの理不尽さに少し怒りが湧き上がった。


