それから今までのいきさつを話した。
「まさかあんなことになるなんて。フロウを憎んでいるようだった」
窓の外から見える景色は先ほどと変わらずのどかである。
初めて来たリュイス部屋もどこか心落ち着く場所だ。
それなのにわたしの心は変わらず沈んだままだった。
「……おれが知っている昔話をしよう。皇妃のことで知っている限りの」
リュイスはわたしの隣にゆっくりと座った。
そして小さい子どもにおとぎ話をするみたいに話し始めた。
「このシロラーナのある大陸から遠く離れた、それこそ裏側の世界とも思える場所に翠(スイ)の国があるんだ。そこが皇妃のふるさと」
わたしは何もしゃべれなかった。いや、しゃべらなかった。
今のこの空間を壊してはいけないと思った。
「翠の国はこの国とは違う土地に政治、そして人々が住んでいる。ただ翠の国にも身分はあって、下から奴隷、農民、労働者、貴族、大王族と呼ばれていたんだ」
頭の中で必死にその様子を再生した。


