【長】純白花嫁

 長い眠りから覚醒する。もう少しで目覚めるんだろうなと思いながら眼を開く。
 空や周りの風景をみる限り、あまり時間は経っていないみたい。小一時間ぐらいってところかな。

 視線を戻した時、第三者の声がした。

「よく眠っていられること」
「えっ」

 少し低い声に反応して、そちらに振り向いた。
 その時、わたしは自分の体が赤の他人のもののように感じた。自分の意志ではないのに、強張ってしまう。


「皇、妃さま……」

 艶やかな黒髪を垂らし、小さく笑みを浮かべながらこちらを見ている。
 黒に映えるドレス……? も艶めかしい。
 ドレスというよらかは、着物に近い。着物風のドレスという感じだ。


「あの、どうしてここに」
「ここを通りかかったら、そなたが寝始めたのではないか。仕方なく、何事もないようにみていただけ」
「そうでしたか……ありがとうございます」

 それなら無理に起こすことだって、人を呼んで運んだり、見張ったりすることだってできるはずなのに。
 わたしが怪しんでいたのがバレたのか、皇妃さまは口を優雅に開ける。

「というのは口実で、そなたと話をしたかったからただ待っていただけのこと」

 その妖しげな笑みに気づいていれば、この先。後悔なんてしなかったかもしれない。